暴力被害を受けた小児における認知障害の原因:神経科学者と臨床家に対する意義

The Origins of Cognitive Deficits in Victimized Children: Implications for Neuroscientists and Clinicians

Andrea Danese, M.D., Ph.D., Terrie E. Moffitt, Ph.D., Louise Arseneault, Ph.D., Ben A. Bleiberg, B.S., Perry B. Dinardo, B.A., Stephanie B. Gandelman, B.S., Renate Houts, Ph.D., Antony Ambler, M.Sc., Helen L. Fisher, Ph.D., Richie Poulton, Ph.D., Avshalom Caspi, Ph.D.

目的
小児期に暴力被害を受けた経験を報告した人は、脳機能に障害がある。しかし、この知見の臨床的意義、再現性、因果関係には異論がある。著者らは2件の大規模コホート研究のデータを用いて、この研究的疑問を直接的に検討した。

方法
著者らは、誕生時からそれぞれ18歳および38歳まで追跡したU.K. E-Risk試験の対象者2,232名とNew Zealand Dunedin試験の対象者1,037名における、前向きに収集した小児期の暴力被害の尺度と、小児期、青年期、成人期の認知機能の関係を検討した。暴力被害と認知機能については複数の尺度を用い、暴力被害が異なる双子の認知スコアを比較した。

結果
小児期に暴力被害にあった人は、青年期と成人期の臨床的に重要な認知機能(一般知能、実行機能、処理速度、記憶、知覚推理、言語理解)に広範な障害が認められた。しかし、暴力被害にあった人に認められた認知障害は、ほとんどが、小児期の暴力被害よりも前に生じた認知障害および交絡する遺伝的および環境リスクによって説明できた。

結論
誕生年が20年異なり出生地が20,000km異なる、合計3,000名以上から成る2件の集団を代表する出生コホートからの知見は、従来の解釈とは異なり、小児期の暴力被害と以後の認知機能にはほとんど因果関係がないことを示唆している。これらの知見は、ストレスの神経科学の因果推論にさらに慎重なアプローチを採用することを支持している。臨床的には、認知障害を、治療中に複雑化する可能性のある特性としてのみならず、暴力被害に関する個人的なリスク因子として概念化すべきである。

(Am J Psychiatry 2017; 174:349−361 監訳:名古屋大学医学部附属病院 親と子どもの心療科 岡田俊先生)


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