リチウムおよびバルプロ酸治療中の自殺行動:双極性障害患者50,000名を対象とした、within-individualでの8年間の前方視的研究

Suicidal Behavior During Lithium and Valproate Treatment: A Within-Individual 8-Year Prospective Study of 50,000 Patients With Bipolar Disorder

Jie Song, Ph.D., Arvid Sjölander, Ph.D., Erik Joas, M.S., Sarah E. Bergen, Ph.D., Bo Runeson, M.D., Ph.D., Henrik Larsson, Ph.D., Mikael Landén, M.D., Ph.D., Paul Lichtenstein, Ph.D.

目的
代表的な患者ではないこと、および疾患の重症度が異なるなどの潜在的な交絡因子のため、双極性障害におけるリチウムの抗自殺効果に関しては限定的な結論しか得られていない。リチウムの代替薬として用いられることがもっとも多いバルプロ酸の効果に関しては、自殺行動についての一貫した知見は得られていない。本研究では、これらの2つの薬剤と自殺関連事象リスクとの関連、および薬剤間の潜在的な差異を、登録ベースの縦断的コホートを対象に、within-individual designを用いて検討した。

方法
複数のスウェーデンの国内登録簿を統合し、そこから得られた双極性障害患者51,535名を対象に、リチウムおよびバルプロ酸治療に関する追跡を2005年から2013年まで実施した。層別化したCox回帰を用いて、治療期間における自殺関連事象のハザード比を推定し、未治療期間と比較した。薬物療法と自殺関連事象との有意な関連性を検討するために、人口寄与割合を推定し、公衆衛生上の双極性障害患者への影響を評価した。

結果
追跡期間中、10,648件の自殺関連事象が発生した。その発生率はリチウム治療では14%低下し有意であった(ハザード比:0.86、95%信頼区間[CI]0.78〜0.95)が、バルプロ酸治療では有意な低下は認められなかった(ハザード比:1.02、95%CI:0.89〜1.15)。リチウム治療とバルプロ酸治療における自殺関連事象のハザード比の差は統計的に有意であった。人口寄与割合の推定では、全追跡期間中患者がリチウムを使用していた場合、自殺関連事象の12%(95% CI:4%〜20%)が回避可能であった。

結論
この結果から、自殺リスクは臨床診療を行う際の検討事項の1つに過ぎないものの、自殺念慮が疑われる双極性障害患者ではリチウム治療を考慮すべきであることが示唆される。

(Am J Psychiatry; 2017;174:795–802 監訳:社会医療法人財団 仁医会 牧田総合病院 精神科 尾鷲登志美先生)


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