被児童虐待歴と前帯状皮質における髄鞘形成障害の関連:エピジェネティクス、転写、形態学上のエビデンスの収束

Association of a History of Child Abuse With Impaired Myelination in the Anterior Cingulate Cortex: Convergent Epigenetic, Transcriptional, and Morphological Evidence

Pierre-Eric Lutz, M.D., Ph.D., Arnaud Tanti, Ph.D., Alicja Gasecka, Ph.D., Sarah Barnett-Burns, B.Sc., John J. Kim, B.Sc., Yi Zhou, B.Sc., Gang G. Chen, Ph.D., Marina Wakid, B.Sc., Meghan Shaw, B.Sc., Daniel Almeida, B.Sc., Marc-Aurele Chay, B.Sc., Jennie Yang, M.Sc., Vanessa Larivière, D.C.S., Marie-Noël M’Boutchou, M.Sc., Léon C. van Kempen, Ph.D., Volodymyr Yerko, Ph.D., Josée Prud’homme, B.Sc., Maria Antonietta Davoli, M.Sc., Kathryn Vaillancourt, B.Sc., Jean-François Théroux, M.Sc., Alexandre Bramoullé, M.Sc., Tie-Yuan Zhang, Ph.D., Michael J. Meaney, Ph.D., Carl Ernst, Ph.D., Daniel Côté, Ph.D., Naguib Mechawar, Ph.D., Gustavo Turecki, M.D., Ph.D.

目的
児童虐待は長期間持続する悲惨な転帰をもたらし、うつ病および自殺など、負の精神的健康転帰の生涯リスクを大幅に増加させる。しかし、この脆弱性の増加の根底にある神経生物学的プロセスに対する理解はいまだ乏しい。本研究の著者らは、前帯状皮質において被児童虐待によりエピジェネティック、転写、細胞の順応が発生する可能性があるという仮説を検討した。

方法
ヒト被験者(78名)および幼若期環境影響の齧歯類モデル(24匹)から採取した死後脳検体を分析した。ヒト検体は自殺により死亡したうつ病患者から採取し、内訳は、重度の被児童虐待歴があった患者(27名)またはなかった患者(25名)、および精神医学的に健康な対照被験者(26名)であった。ゲノムワイドなDNAメチル化および遺伝子発現を、それぞれreduced representation bisulfite sequencingおよびRNAシークエンシングにより検討した。オリゴデンドロサイトとニューロンの核の蛍光活性化細胞選別後に、さまざまにメチル化された遺伝子座の細胞型特異的バリデーションを実施した。NanoString技術を用いて特異的な遺伝子発現をバリデーションした。最後に、オリゴデンドロサイトおよび有髄軸索を、立体解析法およびコヒーレント反ストークスラマン散乱顕微鏡により分析した。

結果
被児童虐待歴は、オリゴデンドロサイト遺伝子のDNAメチル化の細胞型特異的変化およびミエリン関連転写プログラムの全体的障害に関連した。これらの影響は、被児童虐待歴のないうつ病の自殺完遂者では認められず、動物モデルに認められるミエリン遺伝子発現の変化と強く相関した。さらに、被児童虐待歴のある被験者では、小径軸索周辺のミエリン鞘の厚さに選択的かつ有意な低下が認められた。

結論
以上の結果から、児童虐待は、部分的にオリゴデンドロサイトのエピジェネティックなリプログラミングによって、大脳結合性の基本的特性である皮質髄鞘形成を持続的に阻害する可能性があることが示唆される。

(Am J Psychiatry 2017;174:1185–1194 監訳:名古屋大学医学部附属病院 親と子どもの心療科 岡田俊先生)


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